vol.
012
MARCH
2016
vol.012 / 東へ西へ
海、山、空、小笠原に住む人々の姿
筒井浩俊
もしも「生まれ育った小笠原から、なぜ今まで出なかったのか?」と聞かれたら、「自然が好きだから、出る必要がなかった」と答えます。30年以上も小笠原にいる今となっては、自分はもうここにいるのが当たり前。もっと言えば、小笠原が自分の一部になっているような気さえします。
最初は家業を継ぐ形で、ガイドの仕事を始めました。7~8年前まではダイビングやドルフィンスイムのガイドがメインで、今主に行っているのは星空ガイド。国立天文台VERA小笠原観測局に設置された望遠鏡から無数の星を覗いた観光客の方が、言葉にならない感動をあらわにする姿をたくさん見てきました。やはり自然の力は強いです。
世界遺産登録以後、小笠原の人口は増えました。移住者には若い方が多く、ほとんどの人がガイドの仕事をしています。しかし都心から船で 20数時間かけて訪れるのですから、移住にはそれなりの決意が必要でしょう。さらに自然を相手にした仕事は奥深くて、やればやるほどわからない。フィールドに出て行って勉強して……の繰り返しです。少なからずリスクを背負いながら、でも「自然が好き」という気持ちがあるから努力できる。小笠原が誇るべきは、その雄大な自然に加えて、ガイドたちの真剣な姿と言っても過言ではないかもしれません。
編集・執筆:仲野聡子