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vol.

014

SEPTEMBER
2016

vol.014 / 特集

東京アートポイント計画 ハイライト

街に芸術文化の種をまく

都内各地でアートプロジェクトを実施し、街・人・活動をつなぐ「東京アートポイント計画」。地域社会を担うNPOと、東京都、アーツカウンシル東京が共催することで、日常や社会に芸術文化が根付き、東京の魅力を創造していくことを目指しています。今年度は13のプロジェクトを展開中。美術館やギャラリーの外で、多様な人と活動をつくりあげる「アートプロジェクト」には、どんな可能性があるのでしょうか? 東京アートポイント計画に参加しているNPO、アーティスト、サポーター、プログラムオフィサーにインタビューしました。

林曉甫さん友政麻理子さん山上祐介さん芦部玲奈さん


アーティスト

プロジェクトのプランを考えたり作品をつくる作家

友政麻理子さん

街に残すのは、人のつながりという作品

千住に滞在しながら、街の人たちと自主映画をつくって上映会を開くプロジェクト、「知らない路地の映画祭」を行いました。参加したのは、定年退職したおじさんや街づくりに興味をもつ高校生、日本に移住して間もない外国人など、いろいろな人たち。私も含めた全員が映画制作においては素人でした。

プロジェクトの発起人は私ですが、映画を撮るのは参加者たち。そこには、撮影していると近所の人が気軽に話しかけてくれるような、おおらかな「隙」がありました。その隙こそが、豊かな表現やコミュニケーションが生まれる源になっていた気がします。

「知らない路地の映画祭」は、アートプロジェクトにおけるアーティストの立ち位置を考える契機になりました。このプロジェクトは、アーティストが街に作品を置いていくものではありません。私がこの街を離れたあとも、映画制作を通して生まれたコミュニティは残っていくはずです。映画はスタッフ、役者、さらには背景として写り込む風景をつくり出している街の人も含めた、みんなのもの。だから、プロジェクトに自分の名前を冠することにも、ほんとうは少し違和感をもっているんです。街に人が集まれる場(=おおらかな隙)をつくる。それはアーティストの役割のひとつだと思います。

1年で終了する予定でしたが、継続を望む声をいただいて、今年もプロジェクトを継続できることになりました。この街でもう少し、アートプロジェクトのあり方を考えていけたらと思います。

  • 友政麻理子

    コミュニケーションの過程に現れる「型」にフォーカスした作品を制作。2015年、「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」のオープンコンペティションで選出され、足立区・千住でアートプロジェクトを展開した。

編集・執筆:Playce