vol.
014
SEPTEMBER
2016
vol.014 / 特集
東京アートポイント計画 ハイライト
街に芸術文化の種をまく
千住に滞在しながら、街の人たちと自主映画をつくって上映会を開くプロジェクト、「知らない路地の映画祭」を行いました。参加したのは、定年退職したおじさんや街づくりに興味をもつ高校生、日本に移住して間もない外国人など、いろいろな人たち。私も含めた全員が映画制作においては素人でした。
プロジェクトの発起人は私ですが、映画を撮るのは参加者たち。そこには、撮影していると近所の人が気軽に話しかけてくれるような、おおらかな「隙」がありました。その隙こそが、豊かな表現やコミュニケーションが生まれる源になっていた気がします。
「知らない路地の映画祭」は、アートプロジェクトにおけるアーティストの立ち位置を考える契機になりました。このプロジェクトは、アーティストが街に作品を置いていくものではありません。私がこの街を離れたあとも、映画制作を通して生まれたコミュニティは残っていくはずです。映画はスタッフ、役者、さらには背景として写り込む風景をつくり出している街の人も含めた、みんなのもの。だから、プロジェクトに自分の名前を冠することにも、ほんとうは少し違和感をもっているんです。街に人が集まれる場(=おおらかな隙)をつくる。それはアーティストの役割のひとつだと思います。
1年で終了する予定でしたが、継続を望む声をいただいて、今年もプロジェクトを継続できることになりました。この街でもう少し、アートプロジェクトのあり方を考えていけたらと思います。
編集・執筆:Playce