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vol.

013

JULY
2016

vol.013 / 往復書簡

平井理央 × 速水健朗

東京を舞台に、日々の想いを交換するふたり

4

第 4 通 速水健朗→平井理央

2016.08.19

戦友。うーん、見事に思い浮かびません。戦いなき人生。根っからの鳩派です。でもかすかに浮かんだのは、我が家の猫の顔。我が家には夏になると、たまにあの黒光りする「G」が発生します。サバ(うちの猫の名)は部屋にGがいるとそわそわとしだし、姿を見つけると興奮して追い回します。そこに、僕が丸めた新聞を片手に加勢。叡智に満ちた我が人類と動物界最強の獰猛性を備えた猫類が手を組んだ戦い。しかし、多くは苦戦します。野生度ゼロの我が猫は、まったく役に立たず、爪でGをひっくり返すのが精一杯。たかが一匹のGに大苦戦。まあ、これも夏の風物詩。やはり3億年前から生き延びている生き物には敵いませんね。
さて、本田朋子さんと深夜徘徊。楽しそうですね。当時の理央さんたちのようにどうしても遅くまで仕事をしなくてはならず、食事はどうしても深夜になるような仕事の人は都市には多いはずですけど、実は東京の飲食店は、あまり遅くまでは営業してくれません。大阪でも福岡でもよっぽど夜遅くまで店がやっているし、人も街に出ていて驚きます。海外からの観光客と話をしていても必ず、東京はなぜ深夜に遊べる場所が少ないんだと聞かれます。
でも昨今は、その風潮も変わりつつあります。新宿に新しくできたNEWoManのフードコートは、朝4時までやっていて、朝方まで賑わっています。東京の深夜で一番賑わっている場所は、新丸ビルの7階の丸の内ハウス。ここは深夜2時でも人で溢れていて、並ばずには入れない店すらあるくらい。あとは、新宿のゴールデン街とか新橋のコリドー街とかも深夜でも賑わいます。東京も、少しずつ24時間都市になりつつある。
どんな変化が東京にあったのか? 僕は、終電を気にしない人たちが増えたんだと思っています。昨今の東京の都心への人口集中は、長距離の通勤をしないというライフスタイルを生んでいます。かつての東京は、世界でもまれにみる通勤都市でしたけど、今はむしろ職住近接の方が選ばれつつある。ちなみにかつての江戸の町の人口密度は、今の超高層マンションもある東京の都心部よりも遥かに高くて、今以上に街中の活気はあったんだとか。
さて質問です。夏になるとやることってあります?

  • 速水健朗

    ライター。メディア論、都市論などが専門。著書に『東京どこに住む』『フード左翼とフード右翼』(朝日新聞出版)、『東京β』(筑摩書房)がある。『クロノス・フライデー』(TOKYO FM)パーソナリティ。