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vol.

013

JULY
2016

vol.013 / 往復書簡

平井理央 × 速水健朗

東京を舞台に、日々の想いを交換するふたり

6

第 6 通 速水健朗→平井理央

2016.09.02

確かに夏に外で飲むビールは格別ですね。でも、いつの間にやらビアガーデンも進化してたとは。僕のイメージは古くて、やたらくっきりした緑の枝豆と串カツ、そして緑色のギザギザのやつに仕切られた唐揚げ&フライドポテトというメニュー。さらにBGMはハワイアンで、バドガールがジョッキを運んでいるみたいな。さすがに古すぎるか。でも、そんなビアガーデンが残っていたら、それはそれで探しに行きたくなるな。日本の夏、昭和の夏。
僕の人生におけるビアガーデンの記憶は、常にどしゃ降りと結びついています。途中で雨になって慌てて退散し、結局どこか別の屋内のお店で飲み直すみたいな。実際、この国の気候を考えると、どうしても屋外で飲食というのは、難易度が高い。しかも、すぐ誰が雨男だの雨女だの押しつけあったりしがちです。
ちなみに、気候なんて何百年も変わらないものなので、日本には昔から雨女というのはいたようです。「雨女」という妖怪が鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に描かれています。でもこの「雨女」の絵の女は、手をぺろっと舐めている。どうも猫っぽい。猫は、雨が近づくと顔を洗ったり手を舐めたりしますよね。前回は、理央さんも猫を飼っているという話を聞きました。うちの猫は、雨が降るとずっと窓の外を眺めてますが、お宅の猫も雨はお好きでしょうか?
さて、雨にまつわる妖怪がいるくらいに、日本人の生活は激しい気象変化と結びついています。それでも外で飲食が楽しめる場所が増えているのはいいこと。この夏、僕が何度かビールを飲みに出かけたのは、表参道の青山通りから少し奥まった場所にある屋外型フードコートです。各国の料理に合わせて、ビールもタイやドイツのものなどが選べます。1人でふらっと入りやすいのでよく行きます。ここなら雨が降ってもテントがあります。
あと思い出しましたが、昭和っぽいビアガーデンが、うちの近所にありました。東京ドームにほど近い名前もクラシカルなホテルなのですが、ここはいまだにバドガールがいるビアガーデンを営業しています。久しぶりに出かけてみようと思ったら、今年でビアガーデン営業を終了するのだとか。ぎりぎり夏の間に行っておかないと。
夏はもう終わりといった風情ですが、夏が終わると、今度は外でホットワインが美味しい季節が迫ってきます。今年の冬は機会がありましたらホットワインでもご一緒しましょう。

  • 速水健朗

    ライター。メディア論、都市論などが専門。著書に『東京どこに住む』『フード左翼とフード右翼』(朝日新聞出版)、『東京β』(筑摩書房)がある。『クロノス・フライデー』(TOKYO FM)パーソナリティ。